心配は公的医療制度の自由化です。例えば、医療について保険会社が公的医療保険に進出することが可能になります。それにより、国民皆保険制度崩壊が懸念さます。国民医療費をまかなう財源は保険料が約50%、税金が約40%、患者負担が約10%です。
このまま公的医療制度にTPPで介入される可能性は低いと考えられます。特に公的医療制度は社会制度の根幹ですし政府も公的医療制度はTPPの対象としないという方針です。
では、日本政府は日本の公的医療制度をTPPの対象にすることを拒否できるのかという疑問がのこります。 ISD条項を盾に、日本の保険制度は関税と同じで、他国の企業から進出機会を逸したとことを理由に損害賠償を請求される可能性もあります。
混合診療についても問題になります。現在、日本では混合診療を原則禁止しています。混合診療を認めると、「お金を払うほど、よりよい医療が受けられる」という可能性があります。TPPでは、混合診療が解禁になると予想されています。政府がTPPとは関係ないと説明してきた医療について、外務省は混合診療の可能性は排除されないと見解を示しています。
これは国民皆保険制度50周年のわが国の国民にとっては、重大な問題になりかねません。貿易と人の命にかかわる問題が同じ土俵で議論はできませんが、TPPは「命の沙汰も金次第」ということが現実になるからです。
医師の免許が共通になるなどの良い点もあるのでしょうが、ひとえに米国保険会社の市場拡大にとっては大変に好都合であることは間違いありません。
これは日本の皆保険制度が民間医療保険販売の障壁となっていたからです。仮にTPPに参加すれば、皆保険は縮小され風邪や虫歯治療など公的保険から除外される公算となり、その分は個人で加入した民間の保険会社からの保険治療がおこなわれることになります。 金持ちだけが保険に入れ良い治療を受けられるというのは時代の逆行です。50年の歴史があり世界に誇れる日本の国民皆保険が、外圧により縮小されるのは如何なものでしょうか。
また混合診療も認めることになりますし、この治療は保険適用でこの治療は個人保険でとの判定基準も今のところなく、入院病室代から治療代金などはどのようになるか、薬価も外資系製薬会社からの外圧により上がることも予想はつきます。
無防備な日本市場に米国の保険会社は利益追求のために進出したいのには、米国政府の米国皆保険をオバマ政権がすすめていることも 理由の一つです。
保険会社と病院が利益を追求するなかで、国民は安心して治療に専念できるのでしょうか。
現在の保健利用制度はずたずたに破壊され、治療費も膨大に膨れ上がり米国資本の株式会社型病院経営が金儲けの材料となることは間違いないはずです。
環太平洋経済連携協定(TPP)の拡大にむけ交渉が加速し、米国、オーストラリア、ベトナム、マレーシアなど9か国は市場開放のルール作りをいそいでいる。一方意見の相違が噴出している。関税撤廃の範囲の品目など参加するなら踏み込む前にはっきり主張すべきである。不参加の韓国、中国、インドとの関係も最重要である。こんな中、昨日7日に自民党もTPP参加に合意した郵政民営化で郵便預貯金で米国債を買わせられた時と同じという人も多い。(文責) 樋口
国民皆保険という観点から、TPPに参加するべきか否かの問題と高齢化に向けて財政上の制約等いろいろな問題が急激に増加してくるが、それでも国民の平均寿命は世界一でるうし、極めて経済的な運営で、世界で最も効率の良い国民皆保険制度として認められているのであれば、いまさらアメリカから学ぶべき点はほとんど見られないと言ってよい。先ほどの郵政民営化など過去の例から判断して、アメリカはアメリカの利益を最大にするべく、日本の国民皆保険にまで自由競争の原理を導入せよと、無理難題を提示してくる可能性はある。しかし米国では、市場原理主義的なブッシュ政権の時に2008年の世界同時金融危機を経験し、オバマ政権になってから、今まで米国では不可能と考えられていた国民皆保険が導入された
。クリントン国務長官の選挙公約であったと思うが
それに「1%対99%」の問題として全米の関心を集めた所得格差の問題等が取り上げられた。米国の社会そのものが急激に変わりつつあることも事実である。
第一に日本の健康保険制度が成り立っている理由には、日本の医者の献身的な長時間労働が支えている現実があ開業医を中心とした日本医師会が恐れるような、米国の開業医の大掛かりな流入は極めて考えにくい。
TPPによって実質的に影響を受けるのは、最先端を行く医療技術をもった、大手の医療法人に限られるのではないだろうか。つまり、自由診療にかかわる分野が影響を受けるのではないかと考えられる。海外で十分なエビデンスを積んでながら、日本で承認されていない治療薬や治療方法などの売り込みは避けられないだろう。
国民皆保険は国民のある程度の福利厚生を保障するものであって、全国民を平等にすべてカバーするというこれまでの理想を高齢化社会において維持することは不可能である。皆保険制度がつぶれてしまっては元も子もないのである。
これはTPP参加か不参加の問題ではなく、現在の医療制度はもっと議論すべき点が多い。
大事な点をもう一つ考える必要がある。それは何人かの識者も指摘しているように、TPPはアメリカのアジア戦略の一部なのだという認識が非常に重要である。TPPを受け入れずに、日本は日米安全保障が維持できるであろうか。
周知のとおりに最近中国の軍事力の増大は日本の安全保障にとって極めて気掛かりなことである。尖閣諸島の問題、中国の反日教育に基づいた中国一般国民の反日感情など、日本が考慮しなければならないことは非常に多い。
できることなら、日本は中国とできるだけ良好な関係を維持し、ASEAN+3とか+6とか言われる自由貿易圏の形成は大事である。
それだけにTPPによって起きる不都合と日本を取り巻く領土問題などからTPP参加に民意が意向がありえるというシナリオは避けたいと思う。
(文責) 樋口
バイオとTPP 2015/11/25
米国のバイオ技術業界は環太平洋連携協定(TPP)交渉官がまとめた大筋合意について、新薬データの保護期間が限られたものにすぎず、技術革新を損なうものだと批判した。
環太平洋諸国12カ国がまとめたTPPに基づき、製薬会社は少なくとも5年間は新薬データを独占できるが、その後は同様の製品の開発を目指す競合他社とのデータ共有を余儀なくされる。米国では12年間の保護期間が認められており、業界はTPP交渉相手国に対して同等の期間を求めていた。
TPPの発効に向け今後、議会の批准手続きが必要だが、ワシントンでは激しいロビー活動が開始される公算が大きい。ロビー団体のバイオテクノロジー産業協会(BIO)のジム・グリーンウッド最高経営責任者(CEO)は電子メールで配布した発表文で、「12年間のデータ独占権が医療技術革新の継続と新しいバイオ治療の開発に必要な投資を引き付ける必要条件だと、BIOは強く確信している」と表明した。同団体にはギリアド・サイエンシズやアムジェンなどの業界大手が加盟している。
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