中国医薬品事情 2023/7

 中国の医療政策について 

中国で新薬承認申請を行った場合に得点などを解説
日本の約26倍の国土をもち、2025年には人口14.5億人に
ICHに加盟(2017)
NMPAの下部組織である審査部門の中国国家薬品監督管理局医薬品審査セン ター
(Centre for Drug Evaluation「CDE」)が 相談
中国戦略に関しては中国ローカルとの早期の連携 に注力する必要があります

 国内マーケットの縮小傾向で海外進出を強化したい日本の製薬企業にとって、中国のマーケットは益々重要になっています。
 しかし、中国市場開発をにはいくつかのポイントがあります。中でも重要なことは今まで中国は独自に発展をしてきたために医療政策、流通方法、ジェネリック問題などもふくめ沢山の課題を抱えていしまっているのです。
 これらの問題を解決しながら、中国の医療政策は良い方向に向かっていることは事実です。たとえGDPは世界第二位と言えども中国はEUや米国と異なる制度の中で、試行錯誤を短期間で繰り返して発展し、制度は刻々と変わりつつあります。

 この制度改革は特に早いスピードで先進国の良い制度を取り入れています。ですから医薬品の販売承認申請などはFDAと全く変わらず、厳格な基準をもうけています。しかし流通に関しては他国とは大きく異なり、流通は中国開発の最も難しい点の一つと言えます。

 ここではCDE(*1)が発表した中国の政策を含めて簡単にご説明をいたします。また弊社は今までに中国製薬企業数社の顧問をしておりその中で得た新しい情報もお知らせさせて頂いておりますが制度の変化に追いつかない場合もありますことをご承知おき下さいますようにお願い申し上げます。


 中国の医薬品の大需要の背景は中国国民の高所得層や中間層の幅が厚くなっことにより、医療費が増大したことにあります。
今や米国に次ぐ世界第二位となりました。もう一点は日本と同じ高齢化が進み、過去日本で開発してきた高齢者用の医薬品の販売がしやすいと言うメリットが有ります。

 中国政府は中長期的国家計画を2016年に発表した「健康中国2030」でヘルスケアが国家戦略の大きな目標のひとつに位置づけられました。医薬品規制調和国際会議ICHにも加盟(2017年)し罰則も有るので治験などデーター4の信用性もよその国以上に得ました。

 実情は国内販売されたジェネリック医薬品の質の悪さをSNSなどで国民に指摘され、健康被害もでてきたため政府は頭を抱えて厳格な重点政策を作りました。

 何故こんなにもジェネリック製品が多いのでしょうか。そもそもジェネリック医薬品製造に関しては、原薬の製造業者が多い中国ですから中国企業にとってはとても簡単なことでした。現在では粗悪品業者は国によって厳しく摘発されておりますので粗悪製品はかなり減少傾向にありますが国民は信用していません。

 2015年以降は中国の制度改革により悪質なジェネリック医薬品製造者や流通業者が厳罰に処されました。このため医薬品市場の質はかなり向上しました。
また、同時に政府はこれら厳しい政策から、増大な失業者を防ぐために、海外からの製薬業者にたいしては優遇となる政策に変更しました。
 政府は海外の製薬会社が中国内で販売する場合には、中国内で完成させなければならなかった規定を廃止し、中国国内製薬企業を代理とした場合や中国企業に委託生産した製品限り販売が出来るようにしました。


 中国の製薬企業にはメガファーマは有りませんが、バイオに関しては日本を引き離しています。中国生物医薬有限会社は高分子医薬品で業績を確実に伸ばしています。
 また、大手の江蘇恒端医薬会社は低分子薬やジェネリック医薬品の製造し主にガン治療薬を国内で製造販売し業績を上げ、現在ではジェネリック医薬品を日本で販売をするようになりました。他にも日本で販売している中国製薬メーカーは現在4社位有ります。つまり中国の医薬品の品質は確実に向上し、海外に導出れるほどになったと言うことです。

 例えば2000年以前、開発中の中国国産の革新的な新薬はゼロでしたが、今や中国国産のPD-1癌免疫チェックポイント 阻害剤(抗癌剤)(免疫チェックポイント受容体である PD-1(Programmed death receptor‐1)。細胞を攻撃するT細胞の働きにブレーキをかけている蛋白質であるPD-1とPD-L1の結合を阻止することで、PD-L1 により抑えられていたT細胞の働きを活性化することで抗腫瘍効果を発揮させる薬)やADC(抗体薬物複合体)(Antibody-drug conjugate)で抗体によってがん細胞に標的を絞り、抗体に付加した薬物をがん細胞内に直接届けることでがん細胞を攻撃し、かつ正常な細胞への影響を避ける。次世代のがん治療薬と呼ば れている。)までが米欧企業に次々と導出されています。


 更に海外企業と業務提携や合弁会社を設立し、ビオンテック(ドイツ)や日本の塩野義製薬など開発に力を入れ始め再生医療やガン治療薬などでは豊富な研究開発費のなかで新薬の開発も推進されております。近年ではエーザイと京東 健康、武田薬品工業と阿里健康、塩野義製薬と中国平安保険集団といった現地法人との提携、合弁会社の設 立が進み中国の研究開発費を使って研究開発をするようになって来ました。確かにぜんたいてきには中国の医薬品の質など問題もありますが、刻一刻と日本をしのぐ製薬大国に成長することとが予見されます。

 日本の製薬企業は先のアステラス駐在員の問題や特許侵害などのリスクが、中国開発の足かせになっているようですが、日本の製薬企業が海外開発を目指すのであれば中国市場を外すわけにはいきません。

 また、大きな得点として政府は新薬を最初に中国で承認申請をした場合、ジェネリック医薬品製造をさせない、薬価の優遇をしており、新薬を承認申請する海外の製薬メーカーは確実に増えています。
中国の人口からしても患者数でも治験には中国は優位であると考えられます。特に日本の製薬会社は日本人のデータ (民族差を検討するための)をもっている場合が多く、 中国当局にもそのまま受け入れられる実績が多数あるため、欧米の製薬企業よりも試験数を減らして申請できるメリットも生まれました。

 現在中国では承認申請の数も多く、承認申請や治験業務を行う人材が不足し治験費用は高騰しております。なのでジョイントベンチャーや提携をすることもベストな選択と思われます。ただし中国事情をよく知らないと旧態依然の製薬会社も有りますので、弊社や中国事情通にお問い合わせは必ず必要です。

 一般社団法人OMDでは中国開発を希望する日本製薬企業のコンサルタントを受け付けておりますどうぞお気軽にご連絡をいただきますようお願いいたします。

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*1 中国で新薬を上市する場合、現在さまざまな方法が 用意されているため、まず自社の製品がどのカテゴ リーの、どの申請方法をとることができるのか、そのメリットデメリットを現地の専門家を交え協議する必要があります。近年はNMPAの下部組織であり審査部門である中国国家薬品監督管理局医薬品審査セン ター(Centre for Drug Evaluation以下、「CDE」)が 相談を受け付けているため、手持ちの資料と開発計画 の全体像を中国語で用意して臨むことで、ある程度の回答を引き出すことができるようになりました。
日本の薬事申請制度と同様、緊急承認や優先審査など審査 2023.1  23 特集:ヘルスケア・ポートフォリオ のタイムラインを短くするスキームは用意されていま すが、そのための条件を満たしているのか、どこまで 臨床試験の数を減らすことができるのか、その結果薬 価にどう影響するのかを複合的に判断する必要があります。CDEはインターネット上、電話、FAX、電子メー ルなどを通じて一般的な問題について相談できる窓口を設けている他、企業は開発品目特有の問題について CDEにWeb会議を申し込むことができます。

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