ロシアの経済

2018年7月18日(更新)

ロシアの経済について 2018/7/18

 ロシアは原油価格の低迷によって2015年、16年と2年連続で景気後退に陥ったが、原油価格の持ち直しを受けて2017年には3年ぶりのプラス成長を達成した。

 2018年も原油価格が底堅く推移すると見られるため、2年連続のプラス成長が見込まれている。緩やかなインフレと金融緩和を背景に、民間消費が引き続き牽引役となり、2018年の実質GDP成長率は2017年(予測:1.7%)からほぼ横ばいの1.8%と予想される。


 ロシア経済は、2000年代半ばに高成長を遂げたが、2010年代に入ると鈍化が続き、2015年にはマイナス成長に転落しました。

 ロシア経済を2015年に落ち込ませる引き金となったのは通貨ルーブルの急落でした。 2014年に、米FRBによる金融緩和終焉観測の浮上、ウクライナ危機をめぐる欧米諸国による対ロシア経済制裁の発動、主力輸出品である原油の国際価格下落、といったマイナス要因が重なり、ルーブル為替相場は急落しました。

 2014年1月から2016年1月までの2年間で、ルーブルの為替相場は半分以下に下落し2014年のルーブル急落は、輸入物価上昇を通じてインフレ率を大きく押し上げました。

 ロシアのインフレ率は、2013年には概ね6%台でしたが、ルーブル下落が加速した2014年後半には急上昇し、2014年12月には10%を超え、2015年2月には16%台に達しました。ロシア中銀は、2014年後半以降のルーブル下落によるインフレ率上昇に対処するため急速な利上げを実施し、これが、2015年の景気後退をもたらす大きな原因になったといわれています。

 2016年に入るとルーブルの相場が持ち直し、為替相場急落の影響が剥落して、インフレ率は2016年1月には10%を切り、さらに、農産物の豊作による食料品価格低下という追い風も受けて、足元では3%前後まで低下しました。
 足元の景気回復は、ルーブル高による効果が大きいと見られています。

 2016年初頭から、原油価格の持ち直しを受けてルーブル高に転じたことによる輸入物価の上昇の鎮静化が消費者心理を好転させていると見られています。
 また、ルーブル高による資本財の輸入コスト低下は、企業の設備投資意欲を高めています。

 ロシアの財政収支は、赤字続きですが、財政規律は失われていません。また、原油関連の税収を積み建てた巨額の基金を保有しており、万が一の際にはこれを取り崩して対応することができること。さらに、ロシアは、公的債務残高の対GDP比率が世界最低クラスであること。こうした財政面のマクロ・プルーデンスは、国際機関等からも高く評価されています。

 欧米による対ロシア経済制裁は、特定のロシア企業に対して中長期のファイナンスや新規油田開発用技術・機材の提供を禁止することがメインです。すなわち、この制裁は、ロシア企業を「ショック死」させるのが目的ではなく、ロシアの主要産業の中長期的な成長が脅かされることを示してロシア政府に圧力をかけることが目的です。
 ロシア経済の構造的な問題のひとつは、ロシアの国際経済での位置づけが単なるエネルギー供給国にすぎないため、経済動向が原油価格に支配されてしまうことです。もう一つは、主要な新興国に比べてロシアの投資率が低く、資本ストックの更新が進んでいないことです。

  ロシア経済の今後の成長のための大きな課題は、エネルギー以外の産業の発展であります。ロシアの産業は、兵器産業に関しては世界有数の力を持つが、民生産業は発展途上国レベルにとどまります。
 民生産業が振るわない最大の理由は、旧ソ連の社会主義経済時代が長すぎた後遺症で市場経済への移行が十分に進んでおらず、国営企業が未だに大きな影響力を持っていることなどから、民間部門が潜在力を発揮できないためであると考えられています。

 これらの問題を短期に解決するのは難しく、ロシア経済は、今後回復したとしても低成長が続く可能性が高い。 ロシア市場は2000年代に急拡大し、日本企業の注目度が非常に高まったのですが、近年は経済不振により注目度が低下しました。

 ただ、ロシアに進出した日本企業が撤退する動きは顕在化しておらず、中長期的には所得上昇によってロシア市場が拡大するという日本企業の期待感は失われてはいないようです。

 足元のロシア経済の回復を受けて、在ロシア日本企業各社は、再び、事業拡大への準備に入りつつあります。


APTEKA2017 進出に成功した日本企業 厚生労働省の会場挨拶     町中のデパート

ロシアの経済予測 2018/7/19

 ロシアの1-3月期の実質GDP成長率は前年比1.3%増と、前期から加速した。3年ぶりのプラス成長となった17年から緩やかな成長が継続している。しかし、ロシア経済は力強さを欠いており、先行きは1%台の低成長が続くと思われる。
 18年については、堅調な原油価格に加えて、19年に予定されている付加価値税の税率引上げに伴う駆け込み需要が期待されるため、17年から加速する。一方で、19年は駆け込み需要の反動と年金受給開始年齢の引上げが、民間消費に水を差すため、18年から減速すると見込まれています。 


ロシア連邦統計局は、7月2日に2018年1-3月期のGDP統計の内訳を公表しました。1-3月期の実質GDP成長率は前年比1.3%増(原系列)と、前期の同0.9%増から加速し、3年ぶりのプラス成長となった17年から緩やかな成長が継続しています。

 需要項目別に見ると、外需の成長率寄与度は依然マイナスであるが、17年に比べて成長率の押下げ幅は縮小しています。内需は堅調に推移するも、民間消費や総固定資本形成は、前期から減速しました。(図表1)

 GDPの5割超を占める民間消費は前年比2.8%増と前期の同4.3%増から減速しました。政府消費は同0.5%増と前期の同0.4%増からやや加速しました。総固定資本形成は前年比1.8%増と前期の同3.4%増から減速しました。純輸出は輸出が同6.8%増、輸入が同9.6%増となった結果、成長率寄与度は-0.2%ポイント(前期:同 -1.9%ポイント)と成長率を押下げたが、押下げ幅は縮小しています。

 供給項目別に見ると、第一次産業および第二次産業は、前年比マイナス成長であった前期から同プラス成長に転じた一方で、第三次産業は同プラス成長が続いたものの、減速しました。(図表2)

 GDPの約5割を占める第三次産業は、前年比1.8%増と前期の同2.6%増から減速した。内訳を見ると、不動産業、金融・保険業、政府行政・国防などの産業が前期から加速したが、小売・卸売業が大きく減速し、全体の成長率を押下げました。第二次産業は、製造業や鉱業などの産業が前期に同マイナス成長に転じていたが、再び同プラス成長に転じました。

(先行きのポイント) 原油価格の上昇がプラス材料。年金改革が懸念材料。
 
 ロシア経済は、17年に3年ぶりのプラス成長となりました。連邦政府は、17年9月に経済成長率の見通しを示したが、ロシア経済は力強さを欠いており、先行きは見通しの目標シナリオ1を下回る1%台の低成長が続くでしょう。18年については、堅調な原油価格に加えて、19年に予定されている付加価値税(日本の消費税に相当)の税率引上げ2に伴う駆け込み需要が期待されるため、17年から加速するでしょう。一方で、19年は駆け込み需要の反動と年金受給開始年齢の引上げが、民間消費に水を差すため、18年から減速すると見込まれます。

 ロシア経済を語るうえで無視することのできない原油価格は、上昇傾向が続いており、関連企業の業績や輸出は好調に推移している。今後も原油価格は底堅く推移すると予想されるため、関連企業の設備投資や純輸出の拡大を通じて、18年のGDP成長率を押上げるでしょう。

 ロシアでは17年の輸出総額(通関ベース)のうち、原油や石油派生製品などの燃料・エネルギー製品が約6割を占めています。また17年度(1-12月)の連邦政府の歳入のうち、石油・ガス関連の歳入が約4割を占めるなど、ロシア経済における原油価格の影響力は大きいです。

 原油価格は、14年半ばから大きく下落しましたが、世界的な景気拡大によって、需給が引き締まり、16年上旬に底を打った。(図表3)その後もOPEC加盟国と非加盟の主要産油国による協調減産や、ベネズエラ、イランなどの産油国における供給懸念の高まりによって3、原油価格は上昇傾向が続いています。OPEC等は6月下旬に原油の減産緩和を決定したが、市場の供給不足懸念は払拭されず、原油価格の上昇に歯止めはかかっていない。今後も原油価格は底堅く推移するでしょう。

一方で、先行きの懸念材料としては、19年に予定されている付加価値税率と年金受給年齢の引上げがあります。

 3月に行われたロシア大統領選挙は、事前の予想通りプーチン氏の圧勝という結果に終わりました。(図表4)プーチン政権が目標として掲げていた投票率と得票率については、前者こそ目標の70%を下回る67.50%に留まったが、得票率は目標の70%を上回る76.69%に及び、結果として有権者の過半数(51.8%)がプーチン氏を支持する結果となりました。

 プーチン氏は5月7日に行われた大統領就任式で第4期政権をスタートし、大統領令「2024年までのロシア連邦発展の国家目標と戦略的課題」に署名しました。プーチン大統領は、同令において24年までの内政目標として9つの目標を掲げるとともに、18年10月1日までに、24年までの政府の活動方針および社会経済予測、さらに12の国家プロジェクトを策定するように指示しています。6年前の大統領令と比べて内政に力点が置かれています。 (図表5)

 また、連邦政府は6月14日に、付加価値税の税率引上げおよび年金受給開始年齢の段階的な引上げ4を、19年度(19年1月)から開始することを発表しました。これらの改革は図表5の国家目標達成に必要な財源確保のためと推測されるが、特に年金改革については、より直接的に目標を達成する狙いがあると見られます。

 ロシアの平均寿命は、71.9歳(男性:66.4歳、女性:77.2歳)であるのに対して年金受給開始年齢は男性が60歳、女性が55歳となっています。
特に男性は、実際に年金を受給できる期間が短くなっており、受給年齢をさらに引上げる改革に対して各地で抗議デモが発生しています。一方で、現行の年金制度では、保険料だけでは財源を賄えないため、一部を国庫で負担していますが、それでも年金支給額は極めて少額であり、年金受給者の多くが貧困層に含まれていると言われています。
今回の年金改革については、平均寿命が伸びていくことを見越したうえで、年金保障額の引上げひいては貧困層の減少に向けて、連邦政府が踏み切ったと考えられます。

 現行の年金制度については以前から改革の必要性が指摘されており、今回の改革はやむを得ないが、年金受給年齢と付加価値税率の引上げが今後消費マインドの悪化や可処分所得の減少を通じて、景気に水を差す懸念があります。

ロシア経済見通し

2018/7/20

ウクライナ危機を契機に導入された欧米による経済制裁については、現時点で緩和・解除の見通しは全く立っていない。欧米はロシアに対してミンスク合意6の完全履行を求めているが、ロシアはほとんど履行していません。これは、ミンスク合意の内容がロシアにとって受け入れ難い内容であるとともに、従来の経済制裁による影響が限定的であるためだと推測されます。

しかし、4月に米国が発表した追加制裁は、ロシア市場に大きな影響を与えました。米国は追加制裁として、制裁対象をプーチン大統領に近い企業や個人にまで拡大した結果、ルーブル相場や関連企業の株式は大きく下落しました。また、アルミ大手のルサールが対象に含められたことで、アルミの供給が減少する懸念が高まり、国際アルミ価格が高騰するなど、経済制裁の影響はロシア国外にも波及しました。米国は欧州諸国の要望を受けて、制裁の発動時期を6月から10月に延期した結果、アルミ価格は落ち着きを取り戻しているが、10月の制裁発動に向けて再度アルミ価格が高騰することも考えられるため、その動向に注目していきたい。

実体経済
2018/7/20

1−3月期の民間消費は前年比2.8%増となった。18年の民間消費は、インフレ率の鈍化と最低賃金の引上げ等による実質賃金の高い伸びを背景に、引き続き堅調に推移するでしょう。しかし、19年は付加価値税率と年金受給開始年齢の引上げによって、伸びが鈍化するでしょう。

労働市場では、改善傾向が続いており、足元の失業率は4年ぶりに4%台まで低下しています。また、名目賃金の上昇とインフレ率の鈍化によって実質賃金および実質可処分所得は改善傾向が続いています。小売売上高も17年上旬から前年比増加に転じ、堅調に推移しています。(図表7)

賃金の上昇には、継続的な法定最低賃金の引き上げが寄与していると見られます。政府は、第二次プーチン政権(2012年3月)以降、8度にわたる最低賃金の引上げを行い、足元の水準は当初の水準の2倍以上となっています。
 直近では、18年1月に月額9,489ルーブルへ引上げた後、5月にも最低生活限度額相当の11,163ルーブル(約2万円)に引上げており、足元の賃金伸び率は高くなっています。最低賃金相当の労働者の割合は限定的であると見られますが、継続的な最低賃金の引上げが全体の底上げに寄与したと考えられます。

今後の民間消費は、賃金の改善に加えて、19年の付加価値税率の引上げに伴う駆け込み需要による押上げが期待できることから、18年は堅調に推移するでしょう。一方で、19年はインフレ率の緩やかな上昇、最低賃金引上げ効果の一巡、年金支給開始年齢の引上げなどの要因によって実質可処分所得が低下すると見られます。18年の駆け込み需要の反動減と合わせて、19年の伸びは鈍化するでしょう。(出典 ニッセイ・ロシアNOWより)

 


ロシアの医療制度改革と今がチャンスロシア進出

2013年3月19日  オリガ・ドロニーナ  特別寄稿

ロシアで外国人向け医療サービスに関する新規定が承認された。生命の危機がある場合は、これまでと同様、救急医療は無料となるが、その他の場合は自己負担になると、専門家はみている。 ロシア政府は新外国人医療規定を承認した。ドミトリー・メドベージェフ首相はすでに署名を行い、2005年に発効したこれまでの規定は無効と認められた。  主な修正点としては、ロシアに一時滞在あるいは定住している外国人に対する診療を、国および自治体の医療機関だけでなく、医療行為を実施する個人事業主も行えるようになったことだ。  上院(連邦会議)社会政策委員会のリュドミラ・ポノマリョワ第一副委員長がロシアNOWに説明したところによると、新たに加わったのは民間クリニックだという。ロシア国民は最近、義務医療保険基金にもとづいて、民間クリニックに行くことができるようになったが、外国人も同様になった。

義務医療保険契約を結んでいる外国人患者とは別枠で招聘外国人に優遇

また、義務医療保険契約を結んでいる外国人患者は、無料で診療を受けることができる。ポノマリョワ第一副委員長は、これが最近改正された連邦法「ロシア連邦国民のロシア連邦内における移動の自由、居所および住所を選択する権利について」の、「高い技能資格のある外国人」の確保の項目に関連していると話す。ロシア企業はその割り当て人数に従って、外国人を招へいし、法に従って手続きを行い、義務医療保険基金への支払分を控除している。そのため、このような外国人は保険を使う権利を有する。

外国人の生命を脅かす突然の急性疾患は無料

これまでと同様、外国人は無料で救急医療を受けられる。また、生命を脅かすような突然の急性疾患、慢性疾患の悪化の際にも、外国人は病院や診療所で無料の救急医療を受けられる。その他の場合は、診療および治療が有料になる。支払金額は有料医療契約または任意医療保険契約の条件によって定められる。 外国人が計画的に診療所を訪れる場合は、診療代支払義務履行保証書を提出するか、前払いすることが義務づけられる。2005年の規定では、なぜかこれらを同時に行わなければならなかった。診療所の請求書は、治療完了日から10日以内に送られる。また、病歴、診療データ、撮影写真などがある場合、医師にそれを提出する必要がある(以前はこれがほぼ義務づけられていた)。

貧しい国から出産に来る女性たち

下院(国家会議)健康保護委員会のセルゲイ・カラシニコフ委員長によると、この規定によって、外国人の医療における「法的地位」が変わるわけではないが、義務医療保険システムに入っていない外国人は主な診療が有料になるのが、新規定の骨子だという。 ただ、カラシニコフ委員長は、救急医療はあくまでも無料だと強調する。例えば、資金力の乏しい外国人が、これを利用している。発展途上国の女性が、より質の高い医療を受けられるという理由から、ロシアに出産にやって来るのだ。

全ロシア社会組織「患者保護連盟」のアレクサンドル・サヴェルスキー会長は、外国人の医療費を肩代わりしてくれる人がいないと、医療を受けられないに等しいと話す。「外国人全員がわざわざ、ロシアとその外国人の母国の間に医療契約があるか否かを、外務省を通じて照会することはないだろう。照会しない人は黙って払え、ということになる」とサヴェルスキー会長。

ポノマリョワ第一副委員長は、別の問題を指摘する。ロシアのビザ免除国から訪れる外国人のほとんどに、任意保険契約がないのだ。こういった外国人に保険加入を法律で義務づけることは理論的には可能だが、実際には、ビザを持っていない外国人にそれを確認するのは不可能だ。

先週ロンドンで、マルク・クルツェル氏が設立した、キプロス所在のMDメディカル・グループ・インヴェストメンツ(MDMG)の新規株式公開(IPO)が行われた。このグループ企業には、複数の婦人科の個人病院、病院、周産期センターなどが属している。当初、このプロジェクトはそれほど期待されていなかったが、ロンドンのIPOでは、この企業が投資家らに上限9億ドルと評価され、クルツェル氏は株式35%分の3億1100万ドルを受け取った。

「ロシアの民間医療は、現在の市場で最もおもしろい分野です。所得税はゼロにしてもらいましたし、質の高い医療サービスに対する需要は非常に大きく、利益率もとても高いです。国は初めてわれわれに、意義ある支援をしてくれるようになりました」とクルツェル氏。

婦人科医の過酷な生活

MDMGは2010年に設立されたが、クルツェル氏が民間事業を始めたのは1990年代初めだ。アカデミー会員で、小児血液学・腫瘍学・免疫学センターの所長を務めるアレクサンドル・ルミャンツェフ氏はこう話す。

「ほかの優れた医療関係者と同じく、マルクは早期に、患者に対する医療サービスが著しく不足していることを理解し、まず病院ではなく家での診療の資金を探しました。そして数人の仲間とともに、このような医療サービスを立ち上げたのです」。

クルツェル氏は現在でも医療活動に全力を注いでいる。「人生をずっと医師として過ごしてきました。毎朝7時に手術室にいて、夜中にはひんぱんに出産に立ち会っていて、今でも事業は大きくなりましたが、ほとんどの時間は医師です」とクルツェル氏は言う。

需要は巨大だが、リスクを怖がる

1990年代半ばに同氏は、妊婦と新生児の数年間の観察という新しい事業コンセプトを作成し、2000年代初めにはこのコンセプトが「母と子」医院ネットワークの基礎となっていた。その後周産期センターを建設し、これらで得た利益を、母と子以外の老若男女も診察できる病院を建設するという3つ目の事業に活用することにし、現在工事が進んでいる。

「なぜだれも個人産院を建設しなくなったのでしょうか。非常に責任が重いので恐れているんです。分娩中またはその前後に何も起こらないようにするには、とにかく分娩台に気合を入れて立つことです。私のところのすべての医師について、確固たる自信があります」とクルツェル氏。

急成長する民間医療市場と闇市場

今年はロシアの民間医療にとって最高の年だ。他の複数の企業も本格的な投資の呼び込みに成功しているが、どの企業にとっても初めての試みだった。
晩春に、 国際金融公社(IFC)が3500万ドルで公開株式会社メディツィナの6%を取得したが、その1ヶ月前にはベアリング・ボストーク・キャピタル・パートナーズが1億ドルでヨーロッパ医療センターの27%を取得した。

また同時期に、ロシアの民間医療市場のリーダーであるメドシも投資家を見つけた。もっともそれは民間ではなく、国営単一企業「モスクワ市長・政府運営医療センター」だったが。この提携はメドシにとって、資金面で有利であるのみならず、病院もこの医療センターから与えられることになった。

専門家によると、2012年の民間医療市場は20%増となり、この先数年間は同様の成長が見込まれるという。

「民間医療市場の資本化はすでに数千万ドルに達しており、ポートフォリオ投資家はこの分野の将来的な成長を明らかに見込んでいます。成長の重要な要因となるのは、個人医院が義務医療保険の保険証書サービスを行える、保険システムの改革で、実現すれば市場をさらに活性化します」と、「ロスナノ」の大規模医薬品プロジェクト2つを管理する、チーム・ドライブ社のウラジーミル・グルドゥス最高責任者は確信する。

*ロスナノは一般社団法人OMDと関係構築。

ライバルは闇市場 専門家は、有料医療の主なライバルは、市場参入者ではなく、患者から賄賂を受け取る総合病院の医師だと考える。このような賄賂は、年間数億ドルにものぼると試算されている。 「民間医療市場の将来性は高いが、闇市場が障壁となっています。賄賂の額は事業の額と同等ですから。保険システムの改革が行われれば、一般の患者でも有料の医療サービスを受けられるようになるので、状況は変わるでしょう」と、内視鏡外科手術・砕石術センターのダヴィド・ドゥンドゥア最高責任者は考える。

 
「今はロシアへの投資の機会かも」2013年3月27日 アンドレー・ヤコヴレフ  特別寄稿

現代の世界では、多くの企業が地元の市場を飛び出て、より効果的に自社事業を発展させられるような地域を見つけることができる。国際分業によってどの国にも、比較優位性があるのだ。ロシアは石油やガスの備蓄が多い資源国だというのが一般的な捉え方で、投資するならこの分野ということになる。しかしながら、潜在的な投資家にとって他にも魅力的な分野はある。
小売販売チェーン展開とロシアの肥沃な土地

例えばロシアでは現在、小売販売チェーンが急速に成長しており、大都市ではすでに競争が激しくなっているが、他の都市部はまだまだ可能性を秘めている。

もうひとつの魅力的な分野は農業だ。

今日、中国やインドなどの巨大な新興国の給与水準が上がっていることから、食糧に対する需要が世界的に高まっている。ロシアには肥沃な土地がたくさんあるものの、ほんの一部しか活用されていない。これは食肉、穀物、果実の生産が可能な土地のことだ。イタリアのジャム製造会社「ズエッグ(ZUEGG)」はすでに果実生産を行っている。同社は2006年に交渉を開始し、2008年に3500万ユーロ(約43億円)を投じて、モスクワ市の南西180キロメートルに位置するカルーガ州に工場を建設した。従業員数は70人で、売上高は年間1000〜1200万ユーロ(約12〜15億円)にのぼっている。また現在同社の製品は、ロシア国内だけでなく、旧ソ連共和国のカザフスタンでも販売されている。

カルーガ州工業団地の成功


事業の拡大においては、地方政府の姿勢が大きな役割を果たす。工業団地の開発とインフラ整備に力を入れたカルーガ州の実績が、これを証明している。同州は土地を確保し、ガス、電気、水道を引き、交通網に接続した。このような工業団地が整備されれば、投資家は無駄なコストをかけることなく、土地を長期借用または購入することができる。ここ数年はウリヤノフスク州や他の地域もこのモデルを採用している。

先進国では景気の停滞が起こっている一方で、ロシアの経済は成長を続けているため、今ロシアに投資することが得策になる可能性もある。
日本を例にあげてみる。先進経済の国で、GDP成長率は年間1%前後で推移している。日本で活動する企業は、競争の激しい国内市場よりも数段速い速度で成長することは、客観的に不可能だ。

ロシア市場の可能性とリスク

ロシアでは今年、GDP成長率が3〜4%と予測されている。これはリーマンショック以前よりも低い数値だが、EU諸国の数値よりはずっと高い。  ロシアはまた、世界的な大手企業が市場を分割していない大市場であり、数年間で二桁成長が可能な隙間分野もたくさんある。この大市場に参入すると、高い利益と新たな顧客の確保が実現できる可能性がある。  もちろん、これは一方の天秤皿の話であって、他方の天秤皿には、国の制度や規制の未熟さに関連した問題とリスクもある。  そのため、ロシア市場に参入する場合には、高技能人材、交通インフラ、購買力の有無を含む物理的要因だけではなく、国家的管理の質や投資対象地域の事業環境の質にも注意を向けなければならない。 このような分析をする際には、ロシア政府がロシアの事業条件を改善するために、2011年に設立した特別な機関、戦略構想局(ASI)の情報が役に立つかもしれない。
 

シベリア大学に開設されたトヨタ学習センター

クラスノヤルスク市にあるシベリア連邦大学(SFU)で3月29日、自動車メーカーであるトヨタの学習センターがオープンした。ここでは日本の製造管理の基礎について学ぶことができると、アレクサンドル・ウッスSFU学長は開所式で説明した。 SFUとトヨタがこのセンターの開設について合意したのは昨年末。2月に開所する計画だったが、延期されていた。このセンターには練習用コンベヤが設置された教室もある。  「科学教育社会のみならず、クラスノヤルスク地方の製造分野全体の関心を集めることのできる初の試みだ。製造企画で世界の手本となっているトヨタのような会社と、国際提携という形で重要なプロジェクトを実現することができた」とウッス学長は挨拶した。 SFUによると、このセンターではトヨタの工場で30年以上指導した経験を持つ、日本のベテランが教授として教えるのだという。SFUの学生だけでなく、産業分野の中小企業の管理者も、このトヨタの製造システムをモデルとした日本的経営を学ぶことができる。

トヨタ学習センター開設
写真 トヨタ自動車が開校した施設の看板
 
Home